のんがヒロインの声を務め大ヒットしたアニメ映画版がまだ記憶に新しい「この世界の片隅に」が、連ドラになって15日からスタート(TBS系、日曜・午後9時)した。こうの史代氏による同名漫画が原作で、戦時下の広島を懸命に生きた家族の愛の物語。
TBSにあって「愛していると言ってくれ」「逃げるは恥だが役に立つ」などのヒット作を数々手がけてきた土井裕泰氏が演出を手がける。
土井氏は物語の舞台でもある広島県の出身だ。また、今回の実写ドラマ版で誰がヒロインのすずを演じるのか注目されたが、松本穂香が原作のイメージを裏切らない好演で、手堅いスタートを切った。
ヒロインの松本穂香は原作のイメージにぴったり
アニメ版のファンで23回も観に行ってしまった筆者としては正直のんの主演を切望していたのだが、叶わぬ夢だった。ここは頭を切り替えて、ドラマはドラマとして別作品と割り切って楽しんだほうが良いだろう。
すず役に起用された松本は、デビュー当初は所属事務所の先輩である有村架純の妹分と呼ばれていた時期もある。脚本家・宮藤官九郎の大ファンで、NHK朝ドラ「あまちゃん」のような作風が好きという。
最近では神木隆之介と共演したauの意識高すぎCMで相手役の女子高生を演じ、徐々に人気が高まってきたタイミングでもあり、今作が一躍ブレークのきっかけとなりそうだ。
第1話ではポケーッとした雰囲気を醸し出し、世慣れていない生娘が家族に見送られながら嫁いでいく心細さがうまく表現されていた。
視線の強さを感じる女優なので、たくましさも表現することができるだろう。これから戦争に翻弄され過酷な試練を乗り越えながらすずが成長していく過程で、どのように演じ方が変わっていくかが楽しみでもある。
夫・周作を演じる松坂桃李もまた原作のイメージを損なうことのないキャスティングで、松坂との夫婦役はヴィジュアル的にもフィットしている。
実写ドラマ化成功のカギは現代パートの描かれ方
アニメ版の映像は、こうの史代氏による原作漫画のイメージに寄り添い、淡彩画が動き出したような質素な情景が紡がれていくところが魅力的で、独自の世界観が表現されていた。実写ドラマ版の今作では、戦前、一般家庭の照明が白熱電球だった時代ならではの温かな光が巧みに生かされている。
昼間のシーンでも彩度が低く、カメラのピントを浅くして人物の背景を柔らかくボカしたシーンの多さと相まって、フィルムライクな表現と言っていい。そんな映像が、ていねいに演出されたドラマ全体を柔らかく、暖かく、印象づけている。
松本、松坂のほか、共演陣も充実している。すずの小姑・黒村径子役に尾野真千子、呉にある朝日遊郭の遊女・白木リン役に二階堂ふみ、いずれも今後のすずとのからみが楽しみだ。
期待を裏切らず盤石なスタートを切った感はあるが、ひとつ気になるのが原作にはない現代パートの存在だ。ある目的から恋人を連れて呉を訪れている近江佳代役を榮倉奈々が演じているのだが、すずの足跡を追っているようでもある。
ある目的とは何か、徐々に明かされるのかもしれないが、原作にない要素を取り入れて失敗すればドラマ全体が陳腐化してしまうリスクもある。ここは土井氏の手腕に期待したいところだ。
次も見たい度 ★★★★★
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180713-00000007-wordleaf-ent
みんなのコメント
NHKっぽい雰囲気の攻めかたも逆に新しくて好きやし若い人や子供に是非ともオススメしたい一番のドラマ。これからも期待できるから自分も記者と一緒で今のところ間違いなく五つ星。
もしも『原作を忠実に再現してほしい。』という、ファンの要望をそのまま聞いて作品作りをしたら、原作や劇場版に『近ければ近いほど』批判されることは目に見えています。今回、オリジナルの『現代シーン』を入れるなどの工夫から垣間見れるのは、
原作や劇場版に寄せないように、ドラマ独自の演出をしているように感じました。その点から私は、このドラマを『この世界の片隅に』というよりは、『(もう一つの)この世界の片隅に』、あるいは『この世界の片隅に?リミックス』として、楽しみたいと思います。