ホラー漫画の巨匠、日野日出志氏(72)が、絵本作家として約20年ぶりに画業を本格再始動する。
昭和の怪奇漫画ブームの立役者の一人で「蔵六の奇病」「地獄変」など短編約450作を発表。生理的嫌悪感をもよおすグロテスクな絵柄の一方で、異形の者の悲哀を描く“怪奇叙情”で子供を引きつけた。
71年に自身の独白形式で発表した「地獄の子守唄」など伝説的な作品も多い。同作では母親を殺したというウソの設定を盛り込んだり、読者に「この漫画を読んだら死ぬ」と宣告するなど物議を醸した。
「ブラックギャグのつもりだったが、えらいことになった。母親の話だって、本当にそんなことをしたら漫画なんか描けるわけないんだけどね」と当時を振り返った。
70年代初めに核戦争後の未来を想起させる「あしたの地獄」を描くなど、ギリギリの表現を求めてきた漫画家でもある。
だが2000年前後には「人の生死を描く仕事。割り切っていても、身近に不幸が起きると描くのがつらくなった」と発表ペースが落ちた。新作は「長らく描いていない」という。
そんな中、今月3日に銚子電鉄(千葉県銚子市)が発売したスナック菓子「まずい棒」でキャラクター「まずえもん」のデザインを手掛け話題になった。左右に離れたギョロ目、前髪の縮れた“日野キャラ”の復活にSNSが「トラウマがよみがえる」「まずい棒も条件反射で怖い」などとザワついた。
このまずい棒で「創作のスイッチが入った。アイデアがほとばしって出て来る」と意欲が湧いてきた。6月から始めたツイッターでは、自身のキャラクターのフィギュアの写真などを載せて、物語仕立ての投稿を重ねている。
「昔のような怪奇は描けないが、叙情の中に少し怪奇がある絵本を描きたい」と“叙情怪奇作家”を目指している。
まずい棒は、銚子電鉄が“経営状態がまずい”との自虐ギャグを逆手に取って誕生。日野氏の起用は、オカルト研究家の寺井広樹氏の提案で「登場人物の切羽詰まった表情がピッタリ」との理由から。
日野氏は「最初に描いたのは“怖すぎる”と電鉄社員に拒否され、怖さを抑えて描き直した」と苦笑い。来月8日、東京都世田谷区の本屋B&Bで行う寺井氏らとのトークショーで、最初のデザイン案が公開される。
◆日野 日出志(ひの・ひでし)1946年(昭21)4月19日生まれ。旧満州チチハル出身の72歳。同年10月、日本に帰国。67年、漫画誌「COM」の新人賞に入選しデビュー。「ガロ」「少年画報」などで短編を発表。翻訳され海外で人気の作品も多い。ビデオ「ギニーピッグ2」(85年)など映像作品の監督作もある。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180818-00000071-spnannex-ent
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