俳優の豊川悦司(56)がNHK連続テレビ小説「半分、青い。」(月~土曜前8・00)で意外や朝ドラ初出演。ヒロイン・鈴愛(永野芽郁)が弟子入りした人気少女漫画家・秋風羽織を硬軟自在に演じ、唯一無二の存在感を示している。制作統括の勝田夏子チーフプロデューサーに、豊川“怪演”の舞台裏や秋風人気の要因を聞いた。
豊川と脚本の北川悦吏子氏(56)はドラマ史に残る名作、TBS「愛していると言ってくれ」(1995年7月クール)を生んだ戦友。2人のタッグはTBS「Love Story」(2001年)以来17年ぶりとなった。
秋風は漫画だけにとどまらず、鈴愛の人生における師匠。「ここは重鎮にお出ましいただきたい」とキャスティングについては、北川氏と勝田氏の間で早くから豊川の名前が上がっていた。
「たぶん北川さんとしては豊川さんに決まろうが決まるまいが、豊川さんをイメージしながら脚本を書き始めていたと思います。ですから、かなり早い段階から北川さんの中でアテ書きが始まっていたということになるんじゃないですかね」と振り返った。
「豊川さんはそう簡単にはテレビにお出にならないですし、朝ドラは映画と比べて1日に撮影をこなす量が膨大なので、オファーした時の感触は五分五分ぐらい。北川さんとの歴史的なタッグが再び実現したらいいなと願っていたので、お引き受けいただいて本当にありがたいと思いました。
北川さんとの盟友関係もありますし、秋風が鈴愛の人生の転機に大きな関わりを持っている上に、ぶっ飛んだユニークな役ということで、ご検討していただけたんじゃないでしょうか。豊川さんの出演が決まり、制作への手応えを感じるとともに、北川さんの攻めた脚本を豊川さんがどう演じてくださるのか。楽しみで仕方がなかったですね」
豊川は朝ドラ初出演について「親戚縁者一同がみんな見るため、覚悟が必要」という趣旨の心境を口にしていたといい、勝田氏も「それを聞いた時、豊川さんほどの役者さんでも朝ドラというものを特別なものとして見ていただいているのかと、意外でもあり、ありがたくもあり、改めて身の引き締まる思いがしました」と打ち明けた。
秋風の初登場は第21話(4月25日)。長髪&サングラスの風貌はイラストレーターのみうらじゅん氏(60)にしか見えないとSNS上が沸いたが、この風貌は豊川の提案。第43話(5月21日)、新作ネーム紛失騒動を謝るため、岐阜の鈴愛の実家を訪れた際、秋風は西陣織の和服姿。「富士山より西は和装で行くと昔から決めております」。これも豊川がアイデアを出し、北川氏が採り入れた。キャラクター造形は豊川と北川氏、勝田氏、チーフ演出・田中健二氏が話し合い「豊川さんとはアイデアの交換がたくさんあり、非常にクリエイティブな現場になりました」と感謝した。
北川氏のアテ書きは「女性から見た豊川さんのキュートさが引き出されていると思います。鈴愛にガーッと言われてシュンとしちゃったり、秋風は漫画は天才ですが、性格的には子供みたいなところがありますよね。そういう人間的なかわいらしさも魅力ですし、視聴者の皆さんを惹き付けるんだと思います」と分析。
「普通の師弟関係は師匠が立派な人間で、弟子を教える。一方通行というんですかね。それが今回、秋風は欠点もいっぱい持っていて、弟子と同じ土俵でやり合っちゃったり。そういうお互いを刺激し合うところが北川さんらしい師弟関係の描き方だと思いますし、そこがチャーミングに見えつつ師匠としての重みもあるというのが秋風の存在の仕方。それは、北川さんの豊川さんに対する絶大な信頼があってこそ描ける振れ幅なんだと思います」
序盤は“変人”ぶりやコミカルさが際立った秋風。鈴愛が差し入れた岐阜の郷土料理「五平餅」を人生で初めて食べ「うんま!(うまい)」と第一声を発し「これは真実の食べ物だ」と評したのが好例(第24話、4月28日)。
頭の中が正人(中村倫也)一色になって仕事に身が入らない鈴愛には「リアルを拾うんだ。想像は負ける。好きなやつがいたら、ガンガン会いに行け。仕事なんかいつでもできる。ベタなんかいつでも塗れる。空想の世界で生きているヤツは弱いんだ。心を動かされることから逃げるな。そこに真実がある」と熱く後押し(第51話、5月30日)。
鈴愛が律(佐藤健)から別れを告げられると「楡野、描け。泣いてないで。いや、泣いてもいいから、描け。漫画にしてみろ。物語にしてみろ。楽になる。救われるぞ。創作は、物語を作ることは自身を救うんだ。私はそう信じている。物語には人を癒やす力があるんだ」(第62話、6月12日)と創作への持論を語り、激励。
結婚が決まった弟子のユーコ(清野菜名)には「ここ(オフィス・ティンカーベルと秋風ハウス)から送らせてほしい。ここからお嫁に行けばいい」(第70話、6月21日)。秋風の親心は視聴者の涙を誘った。
鈴愛の岐阜弁に「ホンマにおどれは人のDNA刺激するやっちゃのう!何を言うとんじゃ、ワレ!」と河内弁が炸裂したこともあった(第50話、5月29日)。
毎朝さまざまな顔を披露し、お茶の間を魅了。勝田氏は「振り切れたコミカルさと鈴愛の師匠としての揺るぎない説得力。その両方を大きな振れ幅で持ち、矛盾なく存在している秋風という役は豊川さんじゃないと無理だったと思います。これを成立させるのが豊川さんの凄さ。そのことに尽きます」と絶賛してやまない。
視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)も「漫画家編」の本格スタート(第37話、5月14日 )以降、20%の大台超えを連発。豊川が名実ともにドラマを牽引した。秋風人気は「5歳のお子さんが秋風の絵を描いて送ってくれるほど。
秋風という役の世界観はどちらかと言うとマニアックでスタイリッシュだと思っていたので、ここまで広く受け入れられるとは」と勝田氏も予想外の現象。「ただ、やはり圧倒的におもしろいキャラクターなので、老若男女問わない魅力があるんだなと改めて実感しました」。漫画家編も佳境。豊川が創り出す秋風に最後まで目を凝らしたい。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180703-00000069-spnannex-ent
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