コラム【匿名放送作家「Z」 TVのトリセツ】
タレントになっても、食えない。テレビでは食えない時代が目の前だ。民放は全局で広告収入が前年度比でマイナスに転じた。
そこには当然、視聴率争いでトップを独走してきた日本テレビも入り、肝心の視聴率でも落ち始めている。テレビ局全体の地盤沈下が止まらない。
局もあの手この手の策は講じている。日テレはもう何年も、高すぎる社員給与ならびに制作費カットに出ている。テレ朝は、そんな日テレの制作スタッフを引き抜きにかかっている。常勝軍団だった日テレのノウハウが狙いだ。
テレ東も「池の水ぜんぶ抜く」などのヒット番組で気を吐いてきたが、頭打ちで、新番組の企画を内々に大募集していた。その募集案がおもしろい。
「これがテレ東という、らしさのある新しいソフト。フジテレビにまねされるような」であった。
テレ東の企画を実際にパクってきたフジテレビはようやく失地回復したところもあるが、次の関係者コメントが言い得ているように聞こえる。
「あのとき、ホリエモンに買収しておいてもらったらよかった。そうしたら、今ほどの凋落はなかったし、トップを走っていた可能性だってある」
あの2004年、ライブドアの堀江貴文社長はフジサンケイグループのトップにあったニッポン放送を買収し、フジを自分たちの傘下に置こうと試みた。
Tシャツの若造で、社会常識もないIT長者ごときに、日本の大メディアを牛耳られてはならん、というのが大人たちの世論だったと思う。それがどうか。
テレビとネットの融合などを目指した堀江氏の方向が正しく、それを蹴散らした当時会長のドン日枝氏の判断が間違っていたと、関係者まで言っているのだ。
テレビはネットに追いつかれたどころじゃない。今やのみ込まれ、凌駕されつつある。
その節目が今年のように見える。それはハレー彗星などのように、「今まさに夜空に見えます」と言われても、どこかピンとこないけれども、あと何年かして、2018年が転換期だったと分かっていくようになるのではないか。
テレビの現場にいると、それはひしひしと感じる。家電のテレビコーナーに並ぶ最新テレビはリモコンの一番上に「ユーチューブ」などネット動画の閲覧ボタンがついているし、10代から20代の男女に「テレビ見てる?」と聞くと、十中八九、「見てません」と言う。スマホを触りながら。
その昔、学校の教室で、その前の日にお茶の間で見たテレビ番組の話題をし、皆で盛り上がったことなど、彼らには知る由もない。彼らはネットで動画を見て、ニュース速報も、テレビをつけるよりツイッターなどを閲覧していく。何かあれば、その場でコメントをつけるだけ。テレビはもはやマスメディアではないのだ。
▽テレビ業界歴四半世紀、民放各局を股にかけて活躍中の現役放送作家。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180726-00000013-nkgendai-ent
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