先ごろ放送されたドラマ『未解決の女』(テレビ朝日系)で、俳優・吉田栄作が“しょぼくれた”教授役を好演しネットで話題となった。
同様に、元フジテレビアナウンサーの近藤サトは、最近は白髪を隠さないグレーヘアでTV番組に登場し、「和服が似合ってて素敵」、「なんかカッコイイと思った」といったと共感の声が集まっている。“変わらぬ美”といった幻想が重視される芸能界において、“年齢に抗わない”生き方を選んだワケを近藤に聞いた。
■若さにしがみつくのは“時代遅れ”だと思う
近藤は4日、水曜レギュラーを務める『ひるキュン!』(TOKYO MX)で七夕の短冊に「白髪が増えますように」という願いを書いてネットで話題に。11日に50歳となった近藤だが、あえて白髪を隠さず、年齢に抗わない生き方を体現する生き様は多くの女性から共感を寄せられている。
「局アナ時代が第1ステージで、今は第2ステージ」と説明する近藤に現在のテーマを聞くと、「アナウンサーになった最初の頃は“百聞は一見にしかず”で、経験しよう、一生懸命挑戦しようって思いが強かった。それで第2ステージは、ある程度経験をしたっていう実感を伴いつつ、私の中ではもう“老後”なんです。だから今のテーマは“年齢に抗わない”ということです」と率直に語ってくれた。
最近、近藤の“白髪”が「カッコイイ」とネットでも話題になっていることについては「嬉しい」と笑顔。同時に「年齢に抗わないのは、若さにしがみつかないということ。若さにしがみつくのは“時代遅れ”だと思います」と述べ、「これまでいろんな経験を経て、それって馬鹿らしいなと思ったんです」と続けた。
なぜ「馬鹿らしい」と思ったのか、そこには2011年の東日本大震災の体験が影響しているようだ。
「最初は白髪がすごい嫌でストレスだったんです。ちょっとでも白髪が出たら染めなきゃって。でも、2011年に東日本大震災があって、その後に防災グッズを整理している時に白髪染めもバッグに入れようとして、ふと『これっておかしくないか?』と思って…。その時に“年齢に抗わない”という新しいステージが見えました」(近藤サト)
東日本大震災が自身の生き方を見直す契機になったのだという。白髪でメディアに出始めた当初は、事務所の社長に「60歳まではやめろ」とたしなめられた。しかし、「(メディアに出る)男性は白髪でもいいのに女性はダメだ」という固定観念を変えたくなったのだという。
そして近藤は、「結局、女性も白髪を染めているだけなので、『それでいいのか?』って許容範囲を広げたいと思ったんです」と、“白髪のまま”でいることの理由を明かす。
■“年齢に抗うこと”が当たり前の風潮に違和感 「化粧してなくても魅力的だと言われたい」
近藤が先陣をきったものの、メディアに出る女性で白髪の人は珍しい。その点について近藤は、「私は11日で50歳になりましたが、同窓会に行ってもここまで白髪なのは私だけ。でも、人に何を言われようが気にしなくなりました。『ハイハイ』って」と闊達に笑う。
「頑張って若作りしても、若い子にはバレるんです。『変わらないですね』は『変わったね』っていうこと(笑)。私が白髪でメディアに出るようになって、20代のスタッフに『かっこいいですね』って言われて、それはちょっと本音かなと思った。
もちろん、白髪染めをしている人も素敵ですが、“白髪のまま”という、それぞれの価値観があっていいと思うんです」(近藤サト)
確かに、昨今は「年齢に抗うこと」が当たり前という風潮が根強くある。しかし、近藤は「私の年齢だと内面の美が顔に出てきちゃう、だから表面を綺麗にコーティングしても、内面がイケてない人はイケてなく映っちゃう」と説明。そして、「化粧してなくても魅力的だね」と言われることを目指していると語った。
■“生き方”が露呈するナレーターという仕事 「自分の声色や主観が番組に出る」
現在、ナレーターとしての仕事を主戦場にする近藤は、「奥が深い仕事」だと率直に語る。そして、「言わば、ナレーターってTV番組の“影のフィクサー”みたいなもの」だと感じているようだ。
「声だけで番組のカラーを決定するので責任重大です。でも、ナレーターも優秀な方が山ほどいて、プロ同士がしのぎを削っている。しかもこの仕事は息が長く、80代や90代の現役の方もいて、仕事に対する気合も凄いんです」(近藤サト)
だからこそ、ナレーターとしての個性をしっかりと打ち出さなければ、すぐに埋もれてしまうのだ。そして「厳しい仕事ですが、楽しいのは自分の声色や主観が番組に出ること」だと強調する。例えば、ドキュメンタリー番組は作っている人の主観が出る。
ナレーションも同様に、どう読むかで番組の見え方が変わるのだという。「その主観とは私の生き方そのもので、それが露呈するのはある意味怖いけど、とてもやりがいがある」と説明する言葉からは、“ナレーション愛”がにじみ出る。
近藤は、師匠である元NHKアナ・加賀美幸子から「言葉は人」と教えられた。つまり、声には“その人の人となり”がすべて出るものだという意識が強い。近藤は「だからこの仕事は難しいけど、とても楽しい」と語った。
■白髪のままでアナウンサーの仕事をやりたい
節目の50歳となった近藤だが、これまでの人生を振り返った時に、「もう一度やり直したいこと」があるという。
近藤は、やや考えながらゆっくりと話し出した。「局アナ時代にニュースを7年間読んできて、『今だったらこうできるのに』と思うことがあります。時すでに遅しかもしれないですが、女性のアナウンサーやキャスターで白髪のヘアスタイルでニュースを読んでる人はいない。
私じゃなくてもいいんだけど、誰かそういう女性アナウンサーがいたら、発する言葉が素直に受け取られるんじゃないかと思う」そう語る近藤の目は真剣そのもの。
「もちろん、20代の女性が読むニュースも美しいけど、白髪のアナウンサーが問題提起したら、その気持ちがより伝わることもあるのではないかと思っています。
TVのドキュメンタリー番組で、縁側に座ったおばあちゃんに聞いた話がすごく心に染みることってありますよね、それは彼女たちが“ありのままの気持ち”を、“ありのままの姿”で語っているから。私も、そういうアナウンサーの仕事がどこかでできたらいいなと思っています」(近藤サト)
引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180713-00000365-oric-ent
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