改編スローガンは「勝負の秋、進化の秋」―。編成部長の言葉に完全復活を狙うフジテレビの覚悟の程が透けて見えた。「進化のために(終了という)結論を出さないといけない番組も残念ながらありました」―。3日、東京・台場の本社で行われた同局の10月番組改編発表。ひな壇の中央に座った斎藤翼編成部長は前を見据えたまま言った。
テレビ業界の注目を集めた、この日の会見。約80人の記者が詰めかけたのには理由がある。
「楽しくなければテレビじゃない」のキャッチフレーズのもと、82年から93年まで12年連続で視聴率「三冠王」に輝いた栄華も今は昔。すっかり民放キー局中4位が定位置となった同局のトップに昨年6月に就任した宮内正喜社長(74)は、あまりの業績の低迷ぶりに「非常事態宣言」を全社員に発した。
かねてから同社長が唱えてきたのが、「去年の10月改編、今年の4月改編、この秋の10月改編と3つのセット改編で勝負していく」という“3セット改編”での視聴率復活案。
今年4月には全日(午前6時~深夜0時)28・2%、ゴールデン(午後7時から10時)29・8%、プライム(午後7時~11時)29・5%という「史上最大の改編」を断行。
1年越しの大規模改革のクライマックスが第3弾となった10月改編。だからこその記者殺到だった。
今回の改編でも全日5・8%、ゴールデン23・1%、プライム24・5%と、特に夜の番組を大幅に変更。中でも目立ったのが、古舘伊知郎氏(63)司会の「モノシリーのとっておき~すんごい人がやってくる!~」(金曜・後7時)の今月いっぱいでの終了だった。
昨年9月で終了した「フルタチさん」に続く司会番組の終了で古舘氏の番組は同局から消滅することになった。斎藤部長は「他の番組もそうですが、一つの番組が終了するということは出演していただいた方、
制作に携わった方のことを考えると、本当に辛い気持ちです」と話した上で、古舘氏について「新たなレギュラー番組ということは考えていません」と言い切った。
思えば、2016年、テレビ朝日系「報道ステーション」のキャスターを12年間務めた古舘氏を冠番組、その名も「フルタチさん」を用意して、
“三顧の礼”を持って迎えたのが同局だった。しかし、「フルタチさん」の視聴率低迷による10か月での終了に続く「モノシリー」の11か月での終了は計算外だったろう。
そして、後番組として10月からスタートするのが、坂上忍(51)司会の「坂上どうぶつ王国」。「バイキング」(月~金曜・前11時55分)で同局の顔となり、
今年4月スタートの「直撃!シンソウ坂上」(木曜・後9時)も9%台の視聴率を3回に渡って記録と好調の坂上起用について、斎藤部長は「坂上さんの番組がさらに増えるのかと思う人もいるかと思います」と、まずは正直にコメント。
その上で「最初に企画の話があったからこそ、坂上さんにお願いしました。企画ありきで、その企画は坂上さんから聞いたものです。ですから、坂上さんの番組が増えることには躊躇がありませんでした。壮大な企画になると思います」と自信をのぞかせた。
2年間、数字の取れなかった古舘氏を斬り、波に乗る坂上に一本かぶりする。今回の改編をずばり象徴するのが、この金曜午後7時の変更劇だろう。
古舘氏の2番組続けての“早期退場”に私は今年4月の改編時にロングインタビューした同局の編成担当・石原隆取締役(57)の「バラエティ番組は長い目で見ないと育たない」という言葉との矛盾を感じたりもする。
だが、「視聴率」という3文字が全てを支配しているのが、テレビ局の現状。ビデオリサーチ社が900世帯(関東地区)を対象にリアルタイム視聴の割合(現在はタイムシフト視聴率調査もあり)を調べた数字の持つ影響力の大きさもまた理解している。
「結果が出ないものは刷新する勝負の改編です」―。この日、そう言い切った斎藤部長は、さらに「昨年10月から全社的に一致団結し、『変える』『変わる』をテーマに改編、構造改革を進めてきました。みなさんの『見たい』に応えるため、
その中でもフジテレビの番組を選択してもらえるよう、既成概念に捕らわれず、フジを象徴する顔となる番組を生み出していきたいと思います。
そうしないといけない。改編作業は一つの節目の作業だが、その進化は止まることがない。改革を続けていきたい」と真剣そのものの表情で言い切った。
テレビ業界を長年支え、牽引してきた超大物すらもドライに斬った今回の大改革。果たして視聴率という魔物はフジにほほ笑むのか。その答えは、もうすぐ出る。(記者コラム・中村 健吾)
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180903-00000182-sph-ent
みんなのコメント