2016年9月、幸楽苑の静岡清水インター店で起きたラーメンへの異物(人の指)混入事件を記憶している読者は多いだろう。従業員がチャーシューの仕込み作業中にハムスライサーで誤って指を切断してしまい、その欠損部分が来店客に提供する商品に混入した事件だ。

当時、この事件は大きく報道され幸楽苑のブランドイメージは大きく損なわれてしまった。幸楽苑を運営する幸楽苑ホールディングス(HD)の17年3月期決算では、売上高は前期比1.0%減の378億円、営業利益に至っては83.1%減の1億4700万円にまで落ち込んだ。営業利益が大幅に減少した原因について、同社の決算資料は異物混入問題に伴う直接的費用や再発防止対策費用を挙げている。

しかし、この事件がなくても同じラーメンを主力とする日高屋と幸楽苑の間には大きな差が生まれていた。どのような戦略の違いがあるのだろうか?

●小さな食堂からはじまった幸楽苑

幸楽苑の歴史は1954年に新井田傅社長の実父である新井田司氏が福島県会津若松市に開店した「味よし食堂」から始まった。幸楽苑HDのWebサイトによると「従業員3名の雨漏りする食堂」からスタートしたという。75年には麺とギョーザを製造する工場を建設し、多店舗展開にかじを切った。99年には100店舗を達成し、12年にはグループで500店舗にまで拡大した。主に郊外のロードサイドに店舗を構える戦略で、03年にはラーメン業界で全国初となる東証一部上場も果たした。

●ラーメンの安売りで成長

幸楽苑の成長を支えた1つの戦略がラーメンの安売りだった。2000年代に販売を開始した「中華そば」は304円(税込、以下同)で、「麺類の売り上げの3割を占めていた」(広報担当者)。税抜き表示価格の「290円ラーメン」は強い印象を与えた。

だが、原材料や人件費の高騰で販売を15年5月に終了させ、現在は「新・極上中華そば」(421円)が最安値のラーメンとなっている。

看板メニューだった中華そばの販売をやめたことが、幸楽苑の競争力にマイナスの影響を与えた。直営既存店の客数は15年から前期比マイナスの状況が続く。広報担当者も「中華そばの販売をやめた影響が大きかった」と認める。

なぜ、ラーメンの値上げが客離れを招いてしまったのだろうか。

どんな業界にも、客が価格を特に気にする商品がある。例えば、焼肉店では注文数が多い並カルビや生ビールが該当する。

客はその商品の価格を見て「この店は高い」「この店はお得だ」と判断する。一方、プレミアムビールや上カルビの値上げはそれほど気にしない客が多い。

牛丼チェーンでいえば牛丼並盛が該当し、大手3社は価格改訂には常に神経をとがらせている。実際、牛丼並盛を値上げした吉野家は客離れに苦しんでいる(関連記事:「松屋とすき家に「牛丼並盛」の値上げをためらわせた「吉野家の悪夢」)。

このように、価格の変化が客数に大きな影響を与える商品を「価格弾力性が高い商品」と表現する。ラーメンチェーンの場合は、最も安くてシンプルなラーメンが該当する。幸楽苑は、客の来店動機につながる中華そばを値上げしたことで、店舗の魅力を失ったのだ。

さらに、いま流行している「ちょい飲み」需要に応えにくいのもマイナスに作用している。郊外店には車で来店する客が多いため、アルコールの売り上げは伸びにくい。

●日高屋が好調な理由

日高屋の歴史は、ハイデイ日高の神田正会長が73年に中華料理「来々軒」をさいたま市大宮区に創業したことから始まる。さいたま市や都心部などに積極出店を繰り返し、02年に総店舗数が100店舗を突破。現在ではグループ全体で413店にまで増えた(18年2月期時点)。

同社の決算資料によると、直営店舗のうち95%が駅前繁華街に立地している。1都5県の駅前一等地に集中出店するドミナント戦略を採用しており、首都圏以外にも幅広く展開する幸楽苑とは対照的だ。ドミナント戦略はセブン-イレブンが採用していることでも知られる。

日高屋は最安値のラーメンが「中華そば」(390円)で、価格の面で幸楽苑に勝っている。中華そば、ギョーザ、生ビールを920円で提供しており、今流行のちょい飲み需要にもしっかりと応えている。

メニュー数は幸楽苑と比べて多い。日高屋は「ラーメン」「定食」「居酒屋」という3つの業態を併せ持つ。飲食店の経営コンサルティングを手掛けるスリーウェルマネジメントの三ツ井創太郎社長は「通常、メニューが増えると店舗のオペレーションが煩雑になる。しかし、日高屋はお客をあまり待たせることなく提供できている」と分析する。

●数字で見る日高屋の強さ

日高屋の強さは数字にも表れている。「効率的な経営ができているか」を表す販売管理費率という指標がある。売上高に対する販売費及び一般管理費(人件費や広告宣伝費など)の割合を示し、低いほうが望ましい。幸楽苑HDが72.6%(17年3月期)なのに対し、ハイディ日高は61.3%(18年2月期)と11.3%も低い。

もう1つ、日高屋の強さを示す数字がある。それは、売上高営業利益率だ。18年2月期においては11.5%と、主要外食産業のなかではかなり高い水準だ。上場している90社弱の外食企業で10%以上の営業利益率なのは1割に満たないという(リサーチ会社のシェアードリサーチ調べ)。

営業利益は企業が本業で稼いだ利益を表す。一般的な企業は原材料を仕入れて商品を販売する。売上高から売上原価(原材料の仕入れにかかった費用)と、人件費や光熱費などの費用を差し引くと営業利益となる。つまり、日高屋は本業で稼ぐ力が強いということだ。幸楽苑HDの営業利益率は0.3%(17年3月期)であり、両社の差は歴然としている。

日高屋は不断の経営努力とドミナント戦略で、稼げる経営体質を実現している。一方、幸楽苑は強い経営体質をつくれなかったため日高屋に“負けた”のである。


スポンサーリンク


みんなのコメント

 

名無しさん
違うんじゃないか。
幸楽苑は郊外、日高屋は都心に多い。
結局、客の入りがいいところに店があるということだけじゃないの。
料理自体は、幸楽苑の方がうまい。
だけど、日高屋はメニューが豊富なのがよい。
店の立地の差だと思うけどな。
tom
幸楽苑って餃子フニャフニャだしラーメンまずいもん
名無しさん
関東出張の際はお世話になってるわ。
1人で行くご飯の楽しみ方を教えてもらった。
名無しさん
うんとね。幸楽苑は、不味くても値段が安いから行くラーメン屋。今の値段なら、もっと美味い店があるから、行く必要ない。
日高屋は、ラーメン屋じゃなくて中華料理屋。別にラーメン不味くて多少高くても、他のメニュー頼むから問題ない。
あと、ちょっと物足りない時に頼めるサイドメニューがあるのが良い。3個餃子とか、おつまみ唐揚げとか。
要するに、幸楽苑はCSを掴めなかったということ。
名無しさん
幸楽苑、『野菜味噌ラーメン』を推すくせに
味噌に付き物の『一味唐辛子』を置かないとか
客をバカにしてるだろこれ
名無しさん
俺のうちの近くのイオンに幸楽苑入ってたけど潰れた。
まあそうなるわな。
ところで俺は日高屋も行かない。
以前は行ってた時期もあったんだけど、もう何年も行ってない。
禁煙じゃないから。
川崎の仲見世通りの日高屋なんて終日喫煙オーケーだった。
食い物屋さんで今時禁煙じゃなかったら行かない。
まあ何年も前の話だから今は変わってるのかも知れんが。
名無しさん
個人的には、立地と飲みは日高屋。味は幸楽苑かな。
名無しさん
日高屋なんて知らん。田舎には無い。
幸楽苑は近所に3店舗もある。
名無しさん
メニュー構成の差が大きいですね。
幸楽苑にはラーメンを食べに行くだけに対して、日高屋だとタンメンやら定食やらチョイス幅が広がる。当然ながらラーメンは食べたくないけど定食やら一品ならというお客も拾えるから。
ラーメンに特化するならするでもっと思い切ったメニューを投入しないと。
名無しさん
マモちゃんとかアマゾンなら激旨っ!
って食べただろうねwww
『仮面ライダーアマゾンズ参照』
名無しさん
あ~指切断あったな。
忘れてたけどこの記事で思い出したわ。
BMN
経営指標としてあげているのが販売管理率と売上高営業利益率
勝因となった戦略はドミナント戦略
なんか4月入社の新入社員に研修でやらせた分析みたいだな…
(案外図星だったりして)
名無しさん
幸楽苑は、戦略が間違っていると思います。
郊外に店舗を構えるのならば、ターゲットは「おっさん=サラリーマン」だけに絞ってはまずいです。
顧客層は、ウイークデイはサラリーマン中心、ウイークエンドは、ファミリー層中心になるが、ファミリー層や健康志向のサラリーマンの希望に叶うメニューが出てきたのは、この1~2年位前からです。
常時、野菜を使ったラーメンが少ない。
ほかのチエーン店系ラーメン屋ではありえない形態です。
これでは女性やファミリー層は、行きません。
野菜炒め定食ぐらいあってもおかしくはないが、ない。
お酒に関しては、車で来客するお客様が多いので問題はありません。
しかし、駅前店でのつまみも皆無でした。
メニューとサービスが偏っているのが、原因です。
名無しさん
日高屋の社長の話を聞けば分かるんだけど、あそこは、
「ちょい飲み客相手に昔の屋台の代わりになる店」を目指している。
営業利益率で幸楽苑を凌ぐのも駅前立地でアルコール販売に
力を入れているから。
郊外立地でファミリー向けに展開している店とは、根本的に
考え方が違っているので、比較対象としてはどうかな?
名無しさん
どちらも創業当時はすごく美味しいと評判だった。自分も来々軒の餃子がすごく美味しかったことを覚えているし、幸楽苑は具だくさんのラーメンが美味しかったことを覚えている。大きくなったとたんに味が落ちた。少しだけ優っているのは日高屋かな!
名無しさん
たしかに290円ラーメンがなくなって、行かなくなった。別に290円ラーメンだけを食べに行ってたわけではなく、行けば700~800円は食べていた。値上げしても、いけると思った首脳部の判断ミス。味も複雑な味を求めず、さっぱりした290円ラーメンのほうが良かった


スポンサーリンク


名無しさん
どっちも行かない。ラーメンは個人店に行くので忙しい。
よほど何もないとこにあったら行くかな。
名無しさん
そんなに違うかねぇ?
日高屋は品が無くて汚くてあまり入る気になれないなぁ。
幸楽苑も好んで行く気にはなれない。
どっちもどっち。
名無しさん
日高屋もあまり行かないけど、幸楽苑は全くいかない。
ラーメンを食べに行くって習慣が無いので、日高屋は飲み会帰りに寄ったりもするけど、幸楽苑には足が向かない。
外出時、見渡す限りに幸楽苑しかなかったり、わざわざ足が向くほど魅力があれば行くよ。
みんみん
指指って、わざと入れたんじゃないんだから許してやれよ‥
パートの人可哀想だろ
lovepowernico
どっちらの店も一回行きましたが、どちらの店も二回目はいまだにありません。これからも無いと思います。
名無しさん
幸楽苑は、何もかもズルイ
チャーハンの写真を大きく見せ半チャーハンには見えない。当時は看板ではチャーハンと書いてあるがメニュー表だと半チャーハンになっている。
当時のチャーハンは、炊飯器で保温
絶品チャーハンは、毎回炒める
絶品チャーハンは炒めるだけで高い。
外の旗には大盛り無料と書いてあるが、下に小さく2品から選べると高いメニューが書いてある。
290円中華そばと今のラーメンは、たいして変わらないのに100円高い。
年収○○○万と書いてあるが、下にSランクと書いてある。Sランクは、全従業員でほんの数名。
全体的にインパクトで客を寄せ入るとガッカリする。
会計1名1000円超えが当たり前。
290円ラーメンをなくして売り上げ下がって当然の結果。
幸楽苑のやり方が気に入らないので、もう行かない。
名無しさん
日高屋は軽く飲むのに最適。
幸楽苑は車じゃないといけないからな。
名無しさん
いきなりみんなが忘れているような指混入とか書き出して、悪意ある記事にしか見えない。
日高屋が書かせていたらビックリだな。
名無しさん
日高屋は自社工場で、できるかぎりの調理作業はやって、店では必要最小限の手間で出せるようにしてるって聞いた。
マクドナルドみたいでスゴイなと思った。
名無しさん
日高屋?見たことない
名無しさん
日高屋も幸楽苑もデフレ推進企業。
深夜まで営業しても従業員は正社員ではなくアルバイト。
安い食事を出すことによりデフレは続伸され、労働時間が伸びても給料は増えません。
日本の為には無くなった方が良いです。
名無しさん
どっちも不味いよ。リーズナブルな中華チェーン店なら餃子の満州がぶっちぎりで旨いよ。
名も無き傍観者
昔はトッピングで油淋鶏もあったんだがね。
それも無くなり、辛さ変更も出来なくなり、
最近ではニンニクでさえ小袋出し。
私の中での幸楽苑の魅力がどんどん無くなっていく。
名無しさん
どちらも不味い。
福しん派
名無しさん
幸楽苑は正直行こうとも思わんかったな。地元で交通量の多い目立つ位置に店舗があって、女の子の店員が踊りながら客引きみたいな事をしてるのを見て行くまいと思った。
一方の日高屋は、出先の駅構内だったか駅を出てすぐだったか。ともかく入って大体その店の味が分かるだろうと言う、メニューを頼んで食べてからだな。結構、通った。
だけど、駅周辺って立地が多いイメージなのでその周囲に用事が無いと途端に、行けなくなったな。
リーマンしかいないから、周囲の喧騒を気にせずに静かに食べられるのも良いなと思う。
場所によって、労働者の雰囲気が変わるので良くも悪くもその店の味にはなってるけど。
メニューが結構、ツボを突いて来るのも良いと思う。
酒は飲まんけど、つまみも美味しいと思ったし。
この世の中を変えたい
290円の中華そばをやめたから。
それ以来ほとんど行ってない。
たぶんそれがほぼ全てじゃね?
名無しさん
日高屋は店舗増えても味が落ちてない。幸楽苑は・・・。
名無しさん
指は知らなかった
名無しさん
以前、幸楽苑で熱いスープを店員の不注意でひっくり返され身体中を軽く火傷した。
服はスープまみれになり放心状態。
そこに店員が持ってきたのはポケット保冷剤。
お代はしっかり徴収され、店長あたりからのお詫びの連絡もなく、そんな企業なんだなと判断しました。
深夜に女性店員だったから、大変だなと同情しなきゃよかったわ。
名無しさん
味じゃないの?
名無しさん
幸楽苑の利用者は、昼間は外回りの人、夜は帰宅する時間が遅くなった時にちょいと寄れる立地の良さ(幹線道路沿い)とコスパにあったのに自己否定しちゃうんだもんな、そりゃ失敗するわ。
そもそも値上げの理由なんてのはその会社の都合であって利用者には関係無い。原材料高騰・待遇改善なんて言ってるけど、最安値304→421(実質30%以上の値上げ)にして、その間に自社社員の給料を年間最低でも10%以上上げてきたのか?って事。
利用者だって手当や小遣いが上がったなんて聞いたこと無い。むしろ低下し続けているわけで、その中でやりくりする時に真っ先に外食を切るのは当たり前。他の会社を例にとる必要もない。
適正な給料を払う原資として値上げするのは理解できるが、個人店ならまだしもセントラルキッチン方式のチェーン店等でそれやられても利用者からしたら「役員の給料のためか?」みたいな勘ぐりされるのがオチ。
溝の口の女王
日高屋って不潔じゃないですか?
客層も汚らしい人多いし
だからもう行ってませんよ
和風=ω=
私的分析
日高屋vs幸楽苑
日高屋
・ラーメン、チャーハンなどの中華を始め、生姜焼きやから揚げなどの定食やお酒のつまみにあう枝豆や焼鳥などサブメニューのバリエーションが豊富で充実してる
・駅から近い場所にあり、仕事帰りのサラリーマンの飲み会の場として癒しの場所。値段も安いことからお財布にも優しい。
・会計時に味付けタマゴ半額やライス大盛り無料などのクーポン券がもらえる
幸楽苑
・ラーメンとチャーハン、ギョーザしかないイメージ、実際にラーメン以外のサブメニューが少なく、お持ち帰りできるメニューが少ない
・国道沿いなど車でないといけないような、不便で辺鄙な場所にあり、駅周辺など集客率の高い場所に店を構える日高屋とは対象的に立地条件が悪い。
・会計時にクーポン券がでる日高屋とは違い、お得なサービスがない
・お店の雰囲気が暗い=ω=;
日高屋の照明灯は明るけど、幸楽苑はちょっと暗い
名無しさん
幸楽苑の店員の対応の酷さもあるんじゃないかな?
炒飯に関しては、はっきりいってマズイし、一度つめたい物を出されたことがある。冷凍のものを表面だけささっと温めただけのものを平気で出してきた。

 


スポンサーリンク


注目ニュース