もう「侍ポーズ」は見られない。金足農・吉田輝星は今夏の甲子園、初回のマウンドで見せた中堅手と手を振り上げる「シャキーン!!」のルーティンで、大きな話題を集めた。
高校日本代表に合流して以降も、大阪桐蔭の中堅手・藤原恭大との「コラボ実現か!?」で、周囲は盛り上がりを見せていた。8月31日、宮崎県高校選抜との壮行試合で、
吉田は9回裏に救援登板。場内アナウンスと同時に観衆はドッと沸いたが、それよりもファンが反応したのが「侍ポーズ」。1万6000人で埋まったKIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎の視線を、完全に独り占めにしたのだった。
甲子園から続く一連のフィーバーであるが、明日(9月3日)に開幕するBFAアジア選手権(宮崎)では、同ポーズを封印、自粛することになった。当然の判断である。
「アンリトン・ルール」
大会規約には記載されていないが、相手を侮辱する行為は、マナー違反の観点から暗黙の見解として固く禁じられている。例えば、点差が広がった場面での盗塁、敵チームを不愉快にさせる懸念のある派手なガッツポーズなどがこのケースに当てはまるが、
破れば故意死球などの報復を受けるという不文律だ。高校野球では最後まで手を抜かずに全力プレーを貫くことが称賛されるが、国際大会においてはその解釈が大きく異なるのだ。
「侍ポーズ」も自身のテンションを上げるルーティンであっても、受け取る側からすれば「侮辱行為」と見られる可能性は十分ある。
今夏の甲子園でも大会本部から「注意」を受けていたが、「国内の大会」という位置づけからある程度は“容認”されてきた。また、31日の壮行試合も日本の高校生同士の「親善試合」の意味合いもあって“不問”とされてきた背景がある。しかし、国際大会は勝手が違う。対戦チームは、国際映像で甲子園を見ていない限り、「侍ポーズ」を知る由もない。未然に防ぐことが、得策となったのだ。
すでに8月29日、東京合宿期間中に「アンリトン・ルール」の説明があり、吉田、藤原とも“動揺”はまったくない。
「本番ではやらないと決めていたので……。試合前は移動のバスで音楽を聞いたり、試合の中では集中するために、いろいろなことをやっているので大丈夫です」(吉田)
一方、藤原はこう言う。
「大会ではできないと思っていた。予想どおり。ベンチ裏で吉田君がしたいと言えば……。相手に不快な思いをさせてはいけない。自分は昨年も経験して、厳しいことは分かっている。日本人らしく、マナーをしっかりやりたい」
実は慣れないポーズに「ちょっと、恥ずかしいです」と困惑気味だったため「ちょっと、楽ですかね(苦笑)」と本音ものぞかせていた。
とはいえ、藤原は吉田の実力を認めている。
「真っすぐの質は、自分の見た中で一番。守備位置から見ても抜けている。あれを木でとらえるのは難しい」
パフォーマンスは見られなくても、吉田は「甲子園よりも状態が良い」と手応えを語っている。あの地を這うようなストレートだけで、スタジアムの雰囲気を制圧できるはずだ。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
週刊ベースボール
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180902-00000010-baseballo-base
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