大阪府警富田林警察署から容疑者が脱走した事件は発生からまもなく1カ月を迎えるが、いまだに逃走犯は逮捕されていない。なぜ、これほどまでに長引くのか。また、今後の捜査のカギはどこにあるのか。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が分析した。
8月12日に樋田淳也容疑者(30)が脱走してから、9月12日で1カ月になるが、いまだ発見逮捕には至っていない。10日朝の時点まで有力な情報もなく、警察の面目丸つぶれの状態である。まもなく逃亡から1カ月が経過するが、逮捕に至らない1番の原因は『初動捜査』にあると言える。
弁護士との接見終了後、脱走に気が付くまで1時間30分以上も要している。普通に歩いていても5~6キロは立ち去っている計算になる。
接見室からの逃亡という想定外の事案であり、署内を捜索した後の緊急配備。警察の捜索は後手後手であり、出足で負けていたのである。
警察が脱走に気が付く前に樋田容疑者は自転車を盗み、警察の捜索を逃れ、翌13日から数日間、盗んだミニバイクで「ひったくり」を繰り返し、逃走資金を得ている。
あらゆる場所に配られた「手配書」、街中は警察官だらけ、しかし、逮捕には至っていない。逃亡の翌日には服装を着替えており、盗んだ自転車を放置した場所からミニバイクが盗まれた場所までの距離が4キロであることを考えると、協力者の存在を考える必要がある。
逃亡翌日から数日続いたひったくりもパタッとなくなり、必要であった逃亡資金を手にして、今では大阪を離れ、地下に潜り込んでいると思われる。
そんな中、危惧していることが起きた。8月30日深夜に、大阪市港区で「樋田容疑者によく似た男を見た」との通報があった。パトカーが急行すると、急にUターンするなど、交通違反を繰り返すミニバイクを発見。
当然のことであるが、パトカーがバイクを追跡した。バイクは信号無視、一方通行を逆走するなど必死の逃走である。そのバイクは盗難車であることも判明し、パトカーは、樋田容疑者ではないかと、さらに追った。
結果的にその逃走者は樋田容疑者ではなく、大阪市西区のバス停にバイクは激突し、乗っていた男子高校生は死亡した。本来ならそこまで無理な追跡はしないはずである。ただ今回は違ったのである。パトカーの勤務員も千載一遇のチャンスと思い、無理をして追い詰めたのだろう。
私も何度か現地に入り取材をしたが、3000人投入されている警察官だが、「情報が全く降りてこない」と嘆いていた。防犯カメラに映っていたという話もメディアからの情報で知るのが先だそうである。
警察の立場から申せば、極力情報を隠し、秘匿捜査で進めたいのは理解できるが、もうその時期ではないのではないか。
防犯カメラはもちろん、1軒1軒のローラーもやっている。目撃情報、防犯カメラの情報に関しては、逐一情報を開示し、国民からの情報提供、協力を得る必要があると思われる。
前歴のある樋田容疑者は、同級生というより、ムショ仲間であったり、不良仲間を頼っている可能性が強いことは、大阪府警の捜査員も口にしている。
知人の自転車に「置き手紙」のメモがあったことが最近報じられたが、警察のことを=『敵』と表現している。地下に潜ってしまったら逮捕も簡単ではない。樋田容疑者自身が自ら出てこないと逮捕も厳しくなってしまうことが予想される。
ムショ仲間、不良仲間の線を洗いなおす必要があると思われる。(犯罪ジャーナリスト)
引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180910-00000041-dal-ent
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