コラム【TV見るべきものは!!】
一年の中で、お盆ほど「死者」が身近になる時季はない。今月14日から3夜連続放送の「満願」(NHK)は、まさに好企画だった。原作は米澤穂信の同名短編集だ。
「万灯」の主人公は商社マンの伊丹(西島秀俊)。東南アジアでの天然ガス開発が頓挫していた。打開策は村を牛耳る人物の殺害。西島が、仕事のためなら何でもする男を淡々と演じたことで事態の怖さが倍化した。
また交番勤務の警察官・柳岡(安田顕=写真)が、部下である川藤(馬場徹)の“名誉の殉職”に疑問を抱くのが「夜警」だ。刃傷沙汰の夫婦ゲンカを止めようとした現場で突然、川藤が夫に発砲。しかも川藤は首を切りつけられて絶命する。
この作品で安田が見せた、暗い表情の「鬱屈を抱えた警官」は絶品。3作中で最も強い印象を残した。
最後の「満願」は弁護士の藤井(高良健吾)が手がける殺人事件を軸に、過去と現在が交差する物語だ。被告の妙子(市川実日子)は、藤井が学生時代に下宿していた畳屋の女房。夫がつくった借金を取り立てにきた、金貸しの男を刺殺したのだ。一本気な藤井と奥底の見えない妙子。2人の絶妙な距離感がドラマに陰影を与えていた。
制作はNHKと日テレアックスオン。萩生田宏治(第1夜)、榊英雄(第2夜)、熊切和嘉(最終夜)といった監督たちが力量を発揮し、映画3本分の見応えがあった。
(碓井広義/上智大学教授=メディア文化論)
引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180822-00000008-nkgendai-ent
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