2018年9月16日の引退まで、ついに1ヶ月半を切った安室奈美恵。日本全国でのドームツアーなど華やかな“最後”を駆け抜けているが、ここまで絶頂期に惜しまれながら引退する歌手も久しぶりだ。芸能界を退いたタレントの“その後”を振り返ってみると、引退後はまったく別の世界で新たにキャリアを築いた例や、完全に表舞台から去り、“伝説”となっている例、そして “待望の復帰”もある。惜しまれながら引退した女性スターそれぞれの“その後”と、その背景に見える“美学”とは?
■「普通の女の子に戻りたい」「幸せになります」数々の名言と共に引退へ
人気絶頂期での引退と言えば、現在40代後半以上の誰もが思い浮かべるのが、キャンディーズや山口百恵が残した名言だろう。1977年7月にキャンディーズは突然、日比谷野外音楽堂で「私たち、今度の9月で解散します」と宣言。
その際、メンバーが「普通の女の子に戻りたい!」と泣き叫んだ言葉は強烈なインパクトを残し、その後流行語にまでなる。
そして、ラストシングル「微笑がえし」はキャンディーズ史上、最初で最後のオリコン週間シングルランキング1位を獲得。
翌年4月には後楽園球場で卒業コンサートが開催され、当時最多の5万5000人の観客を集める。そして、その3日後に録画放送され平均視聴率32.3%を記録。「本当に私たちは、幸せでした」とこれまた名言を残して解散した。
そのキャンディーズよりインパクトが強かったのが山口百恵だ。1972年にオーディション番組『スター誕生!』(日本テレビ系)で20社からの指名を受けてデビューすると、
『赤いシリーズ』に代表されるドラマや映画の女優業、作詞・阿木燿子・作曲・宇崎竜童のコンビでヒット曲を連発し、10代ながら『NHK 紅白歌合戦』(NHK総合)のトリを務めるなど、
まさに国民的スターとして活躍。しかし1979年に俳優・三浦友和との交際を宣言すると、1980年に三浦との婚約&引退を発表。
同年10月に日本武道館で行なわれたファイナルコンサートでは「私のわがまま、許してくれてありがとう。幸せになります」と言い残し、白いマイクを置いてステージを去った姿はあまりにも有名だ。
わずか21歳で引退し、その後はいっさい表舞台に立っていないことも含めて、日本の芸能界史上もっとも伝説的な引退と言えるだろう。
■引退と復帰、それぞれが“女性の幸せ”を描くドラマに
こうしてもっとも理想的な引退(=引退後は表舞台に出ない)は、“山口百恵型”という刷り込みができたのも事実。山口百恵型の引退で言えば、かつてのちあきなおみや桜井幸子などがあるが、
最近では乃木坂46の橋本奈々未(家庭の経済状況が好転したため)や嗣永桃子(教育分野に進むため)、堀北真希(家事・育児に専念するため)などが芸能界に戻る意志のない引退に見える。
きっぱりと引退宣言し、その後は復帰しないという姿勢はある種の“美学”であろうし、特に女性芸能人の場合は、本人にとっても支持するファンにとっても、ひとりの女性の“幸せの形”を考えるいい機会とも言える。
一方で、引退したスターたちは、ファンがいれば必ず“復帰”も待望される。ところが、復帰したらしたでまた“お騒がせ”状態になることも多いのも事実だ。
たとえば、先の山口とともに「花の中三トリオ」を飾った森昌子は、1986年に森進一との結婚を理由に引退したが2001年に復帰、2006年に再復帰した。
また、キャンディーズにはじまる「普通の○○」シリーズの第2弾、「普通のおばさん」になるために1984年の『NHK 紅白歌合戦』で華々しく引退した都はるみは、5年後の同ステージで復帰。当時は(あれだけ派手に引退しておいて…)などとバッシングを受けた。
ただ、キャンディーズについてはメンバーがそれぞれ解散後は女優業や歌手業(一時期)で活躍。一度も再結成しなかったことから “きれいな解散”というイメージも強い。
もっとも、森昌子も今では息子(ロックバンド・ONE OK ROCKのヴォーカルTaka)の人気もあり、バラエティー番組でもよく見かけるようになった。都はるみにしても、その後も『NHK 紅白歌合戦』で大トリを務めるなど、復帰後も人気を継続。
各々の活躍を見ればいい形で復帰できたと言えるだろう。たとえ復帰するにしても、復帰を待望してくれるファンたちがいるなら、その夢を叶えることも立派な“美学”と言える。
■ラストスパート突入 平成の歌姫・安室奈美恵が駆け抜ける花道
そして、いよいよ9月16日に引退が迫った安室奈美恵だが、今年最大、いや山口百恵以来の“大型引退”とも言えるだろう。昨年、自身の誕生日の9月20日に突然引退を発表し、
以後11月に発売されたベストアルバムは発売2ヶ月で累計200万枚以上を売り上げ、各地で行なわれたラストツアー『namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~』(アジアツアーも含む)は計80万人を動員。
6月3日の東京ドームでファイナルを迎え、「25年間ありがとうございました!」と涙ながらに語り、「最後は笑顔で…みんな元気でね! バイバーイ!」と去っていった。
同時に、やはり安室奈美恵の引退を惜しむ動きは盛り上がる一方。東京・大阪・福岡・沖縄の各地では、展覧会『namie amuro Final Space』が開催中だ。
プロデューサーである依田謙一氏(日本テレビ放送網株式会社事業局イベント事業部)が、引退への花道の一つである展示会について思いを語ってくれた。
「本人もきっとそう思っていらっしゃると、私たちも勝手に思っているのですが…引退は後ろ向きではないんですよね。前向きに彼女の門出を祝うと言いますか、この展覧会が未来に繋がっていることを表現しています。
『Finally』という曲の歌詞がまさにそういう曲なのですが、振り返るだけではなくて“これからもファンのみなさんの中に安室さんがいる”と感じられるようにするのが、展覧会として大事なことなのではないかと思っています」
スターの引退劇には、それまでの楽曲や演技以上に本人の生きざまや美学が凝縮される。安室奈美恵の引退にしても、前出の依田氏が「安室さんと、4会場で統一する“象徴的な言葉が欲しいね”と話しました。
そして、彼女が皆さんに託したかったメッセージのひとつが、『Final Tour』の最後のMCで言ってた“あなたの素敵な毎日に、素敵な音楽がいつもあふれていますように(May music fill your wonderful life.)”。
安室奈美恵を通して素敵な音楽と出会う喜びを知ったファンのみなさんが、この展覧会でもそのメッセージを感じていただければ嬉しいです」と語るように、安室の残すメッセージはいつまでもファンたちの心の中で輝き続けるだろう。
こうしてみると、引退劇と復帰劇はひとつのシナリオを楽しんでいるようなものである。スターたちの“引退”そして“復帰”はそのスターの美学が宿る究極のドラマであり、エンターテインメントと言えるのかもしれない。
引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180801-00000328-oric-ent
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