7月15日にスタートするTBSの新ドラマ『この世界の片隅に』(毎週日曜21時)で実に23年ぶりに女優業を再開させる女優の仙道敦子。こちらが口にした「復帰」という言葉に対し、仙道は少し考え込むような表情を見せた。「そうなんですよね…実際に久しぶりですから、そう受け取られるのは当然なんですけど。ただ、自分の中ではそんなに大きなこととしては捉えていなくて…」。久々の現場で彼女は何を感じているのか? 撮影が進む現場で話を聞いた。
こうの史代の同名漫画を原作に、日本が泥沼の戦争に突き進んでいく中、広島県の呉に嫁いだヒロイン・すず(松本穂香)が紡いでいくかけがえのない日常を描き出していく本作。仙道はすずの母親のキセノを演じる。
「少しずつ、お仕事をさせていただこうかなということを事務所の方とお話させていただいてたんです」――。その矢先に今回のオファーが届いた。「最初は正直、こんな急にお話をいただけるとは思ってなくて、もう少し時間を要するかなという気持ちで『まだちょっと早いと思います』とお断りしようとしたんです」と明かす。
だが、演出を担当するのが、彼女が23年前に最後に出演したドラマ『テキ屋の信ちゃん5 青春 完結編』でも一緒に仕事をした土井裕泰であること、何より物語の素晴らしさに心が動いた。「原作も読んでいて、
(映画化された)アニメも見ていましたし、こういうタイミングで土井さんからお話をいただいて、この出会いを大切にしないといけないんじゃないか?という奇跡的な何かを感じる部分もあり、まだ早すぎる…と思いつつも、やらせていただこうと決めました」と出演を決意した経緯を語る。
過去にも戦争末期の長崎を舞台にした映画『TOMORROW 明日』など、戦争を扱った作品には出演してきたが、今回、作品を通して改めて感じる部分があったという。
「あの時代のことは自分の中にいろんな思いとしてあって、悲惨さやその哀しみを(演じた当時の)年齢ごとに感じる部分はありました。ただ今回は、それだけじゃなく、あの時代にみんな、しっかりと日常を生きていて、
愛する人や家族がいて生活があって…でもその毎日が戦争で突然、壊されるという部分が描かれていて、それはすごく恐ろしいことだなと。それは、自分がいま家族を持ったことで、若い頃よりも失ってしまう怖さというのを改めて感じました」。
この日、撮影が行われていたのは、すずが9歳の頃のシーン。なかなか出先から戻らないすずを心配し、やがて帰ってきたすずを軒先で叱りつつも優しく抱きしめる。
キセノの溢れんばかりの母性が伝わってくるシーンだったが「そういう部分は、実生活に助けられているのかもしれません。
全て、この23年の間で経験してきたことなので。その意味で、久しぶりのドラマで演じるのが母親役でよかったのかもしれませんね」とほほ笑む。
衣装合わせで土井から「お帰りなさい」と声を掛けられ「ただいま」と返しながら「思わず胸がジンとしちゃいました」と嬉しそうに語る。
スタジオに足を踏み入れる前は不安や緊張もあったというが「不思議と現場に入ると落ち着きました」とも。いや、いまでも落ち着かない気持ちがなくなったわけではない。
「現場のみなさんの動きに助けられていますね。ひとりで舞い上がって、でもそれを見せないようにしつつ、心の中でザワザワしながらスタジオにいます(笑)」。
主演の松本穂香に話が及ぶと「すっごくかわいいです。それしか言葉が出てこない」と顔をほころばせる。松本は現在21歳だが、その年齢の頃と言えば、仙道はちょうどドラマ『クリスマス・イブ』に主演していた頃。
「顔を合わせると『体調は?』『ちゃんと寝てる?』とか気になっちゃいます。自分にもこんな頃が…と思うんですけど、正直、当時のことはすっかり忘れてますね(笑)。今回、3世代のすずちゃんとの芝居があるんですけど、人生の縮図を見ているようで、自分が子役だった頃のことに思いを馳せながら、ひとりで胸を熱くしています」。(取材・文・写真:黒豆直樹)
日曜劇場『この世界の片隅に』はTBS系にて、7月15日より毎週日曜21時放送。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180715-00057469-crankinn-ent
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