7月に入り首都圏では梅雨明けが発表された。暑さと共に音楽フェスの季節がやってくるが、近年目立つのは女性アイドルグループの出演数の増加だ。今年は『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に、史上初めてAKB48グループからNGT48の出演が決定し、先ごろネットでも話題になった。近年のロックフェスの人気拡大の裏で、実はアイドルの出演が定番化している現状がある。その背景を探ると、音楽シーンの変化とともにロックフェスとアイドルの補完関係が浮き彫りになってくる。
■NGT48が『ROCK IN JAPAN』に出演決定し話題に
6月6日、NGT48を卒業した北原里英が「えー!NGTロッキンオンに出るの!?卒業撤回!」という投稿がバズり、Twitterトレンドに「ロッキン」がトップ10入り。
これをきっかけに、8月上旬の4日間にわたり、茨城県・国営ひたち海浜公園で開催される『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』(※以降RIJと表記)に48グループから初めてNGTが出演することがネットで話題になった。
同フェスは、サザンオールスターズ、奥田民生、Dragon Ash、松任谷由実ら日本を代表するアーティストの出演はもちろん、今年も多数のアイドルが登場。
NGT48、欅坂46、鈴木愛理、BiSH、ももいろクローバーZ、でんぱ組.inc、チームしゃちほこ、あゆみくりかまき、モーニング娘。’18、アンジュルム、私立恵比寿中学と、アイドルだけでも大所帯だ。
■音楽性・パフォーマンス性に個性のあるアイドルが重宝? ロックファンも好意的な傾向に
ネット上では「なんでロックフェスにアイドルが?」との声も見受けられるが、先述のNGT48の出演に際して、SNS上では「AKB48は合わないけれど、NGT48ならイケる」という声もあり、フェスのファンには概ね好意的に受け入れられている模様。
現在は、『RIJ』以外のロックフェスにもアイドルが出演することはもはや珍しいことではなくなってきているが、アイドルならなんでも出演OK、というわけではないようだ。
今回出演するのは音楽性とパフォーマンス力に定評のあるグループたち。欅坂46はメッセージ性の高い「サイレントマジョリティー」、『NHK紅白歌合戦』の鬼気迫るパフォーマンスも話題を呼んだ「不協和音」などエッジの利いた楽曲と、大人社会への反抗やアンチテーゼといったシリアスな世界観で若者世代に人気を博す。
『RIJ』では昨年に引き続いて最大キャパのGRASS STAGEに出演する。また、『ROCKIN’ON JAPAN』本誌2017年12月号でもセンター・平手友梨奈が単独表紙の“別冊”が付属し120分の超ロングインタビューが掲載された。
NGT48は、ラップ調から始まるミディアムテンポの「青春時計」で昨年デビュー。セカンドシングル「世界はどこまで青空なのか?」は荻野由佳が一心不乱にダンスを繰り広げるMVで泥臭く夢や希望を追いかける姿を表現するなど、アイドル然としない音楽性に定評がある。
そのほか、“ポスト安室奈美恵”の呼び声もある鈴木愛理、“楽器を持たないパンクバンド”Bishといった音楽性・パフォーマンス性が評価されているアイドルが受け入れられる傾向にあるようだ。
■フェス人気の拡大により差別化が困難に、Perfumeの登場以降アイドル出演の潮流
『RIJ』以外のロックフェスにもアイドルの出演は定番化している。硬派なイメージのロックフェスにおいて、流れを変えたのはPerfumeの2008年の出演。
人気フェス『SUMMER SONIC』を振り返ると、08年にPerfumeのほか、“レジェンド”小泉今日子が登場、11年に少女時代、12年にももいろクローバーZ、14年にでんぱ組.inc…その後も欅坂46、たこやきレインボーなどが出演。今年はBish、PassCodeがラインナップされている。
ほか、西川貴教主宰『イナズマロックフェス』にはバンドに混じって、過去AKB48、NMB48、ももいろクローバーZ、アイドリング!!!が出演するなど、ジャンルの垣根を超えた共演が行われてきた。また、5月にさいたまスーパーアリーナにて行われた『VIVA LA ROCK』は、セットをほぼそのまま使ったアイドルフェス『ビバラポップ!』を開催するという試みも行われている。
『RIJ』でもPerfumeの2008年の出演からはじまり、きゃりーぱみゅぱみゅが12年から出演。13年にはBABYMETALが登場。
13年はでんぱ組.inc、9nine、アップアップガールズ(仮)、PASSPO☆、BiS、LinQらがステージに立ち、アイドルがロックフェスに出演するという潮流が生まれた。
13年の新聞各紙では「例年に比べて目立っていたのがアイドル勢だ(中略)ジャンルを隔てる境界線が薄らぎ、様々な要素が拡散、混交する現在の音楽シーンを表していた」
「アイドル夏フェス元年」などと評されていた。Perfumeのあ~ちゃんは『RIJ2013』のステージで「ロックっていうものの捉え方が変わっているのかなって。(中略)夢とか、信じるものを、想い続けることなんじゃないかなって」と“ロック”再定義を提案していたのだ。
ロックフェスの認知拡大で現在は、夏だけでなく春から通年で様々なロックフェスが開催されている現状が続き、フェスの“差別化”が図れなくなっていた中で、アイドルの出演は一つのアクセントになったと言えそうだ。
その一方、『FUJI ROCK FESTIVAL』は洋楽志向の強いフェスでもあり、アイドルの出演は皆無というスタンスを貫き続けている。
2016年にBABYMETALの出演が話題になったことがあった。しかしながら、もはやアイドルというより世界ではアーティストとして認知されているBEMYMETALは一口に“アイドル”と表現していい存在ではないかもしれない。
この心理に、アイドルがロックフェスに出演が相次いでいる、現代のヒントが潜んでいる。
■お互いが隠れ蓑&ファン層の補完になる相乗効果
ももクロの「モノノフ」、チームしゃちほこの「しゃちほこ軍団」、BiSHの「清掃員」などファンの総称があるように、アイドルのファン同士は結束が強い。
強い動員力を持っており、それを当てに主催者側がアイドルをブッキングしているのは想像に難くない。また、先述の元NGT48北原里英のツイートの通り、アイドル側も音楽フェスへの出演はある種の“名誉”であり、進んで出演している背景もある。
例えば、実はアイドルを見たいが、「音楽フェスに行く」という大義名分の下に、堂々とアイドルを鑑賞しているケースもあるはず。もちろんアイドルファンがフェスでロックアーティストに魅了されるケースもあるはずで、お互いの存在が隠れ蓑・補完関係となっているのだ。
また、機材の転換とサウンドチェックに時間が掛かるバンド勢に比べて、基本的にアイドルは即、次のグループが出られるというメリットがある。
アイドルは人数も多く、ステージの端から端まで走り回ってオーディエンスを煽ったり、盛り上げ方にも多様性が生まれる。「アイドルはロックじゃない」との声もあるが、音楽フェスにはアコースティックギター一本で歌うシンガーも、ヒップホップグループが出るのはもはや珍しいことではない。
アーティストはボーダーレスに互いを認め合い、音楽シーンの発展に寄与する風潮が生まれている。そもそも、もはやロックという言葉の定義すら変わってきているのかもしれない。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180702-00000358-oric-ent
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