「東京チカラめし」を覚えているだろうか。2011年以降急速に店舗数を増やし、一時は既存の大手牛丼チェーンを脅かすほどの勢いがあった。

しかし、急拡大の一方で“負ける”のも早かった。12年9月には店舗数が100店を超えたが、現在は都内を中心に10店舗程度を運営するにとどまる。

「店舗の急拡大にオペレーションが追い付かなかった」「店舗の清掃が行き届いていなかった」などと指摘されているが、衰退した背景には何があるのだろうか。

●急成長した東京チカラめし

東京チカラめしを運営しているのは、居酒屋「東方見聞録」や「月の雫」を手掛ける三光マーケティングフーズだ。東京チカラめしが東京・池袋に1号店を出店したのは11年6月だった。主力メニューは「焼き牛丼(並)」で、オープン時の価格は280円(税込、以下同)だった。

公開されている三光マーケティングフーズの第36期中間報告書には「東日本大震災以降の日本において、『日本にチカラを!!』という意味も込めて、末長く愛され、必要とされる業態『東京チカラめし』を誕生させました」とある。

それまでの大手牛丼チェーンは煮込んだ肉を使っていたため、焼いた肉を丼に乗せて提供するスタイルは大いに注目された。当初は、駅前などの繁華街を中心に出店しており、12年2月には首都圏に40店舗を展開していた。

当時の平林実社長は「居酒屋業態につきましては、お客様の節約志向の影響から、厳しい状況が続いております」としたうえで「『日常食業態の拡大』をテーマとして掲げ(中略)新規業態開発に注力してまいりました」と第36期中間報告書で語っている。つまり、東京チカラめしを大きな収益の柱に育てようとしていたのだ。

●牛丼チェーンが寡占になる理由

東京チカラめしが“負けた”理由を解説する前に、一般的な飲食業界と比べたときの牛丼業界の特徴に触れておこう。

飲食業界を分析する指標に「在庫回転日数」がある。これは、在庫が何日かかって回転したのかを表す指標で「棚卸資産÷1日の売上原価」で求められる。棚卸資産には商品、製品、仕掛品、原材料などが含まれる。

在庫回転日数について飲食店の経営コンサルティングを手掛けるスリーウェルマネジメントの三ツ井創太郎社長が解説する。

「在庫回転日数が短いということは、商品の回転率がよく、効率的な収益を上げている状態(在庫の現金化が早い)。

一方、在庫回転日数が長いということは、過剰な在庫などを抱えており、在庫の現金化スピードが遅いということだ。牛丼チェーンの場合、他業態とくらべて在庫回転日数が長くなるのはそのためだ。在庫をあえて抱えられるのは資本力のある企業に限られる」

牛丼チェーン大手の在庫回転日数を他の外食チェーンと比較してみよう。すき家を運営するゼンショーホールディングスは37.1日(17年3月期)、吉野家を運営する吉野家ホールディングスは30.1日(18年2月期)だ。他業態は数日~10日程度と短い。

牛丼チェーンは資本力がないと展開できない業態であり、大手3社の寡占状態となっているのはそのためだ。

●都市型における牛丼店の戦略

東京チカラめしは繁華街を中心に出店していた。一般的に、繁華街の小型牛丼店はランチなどのピークタイムにおける客数が店舗全体の売り上げを大きく左右する。店舗の業績を分析する指標としては「客席回転率=客数÷客席数」がある。繁華街は家賃が高いため、店舗面積を広げることが難しく、客数回転率が重要になる。

東京チカラめしの焼き牛丼には「焼く」というオペレーションがあり、すき家や吉野家のように「よそう」だけの店舗と比べて提供時間が長くなる。つまり、ピークタイムに客数が稼げないのだ。

繁華街の牛丼店で食事をする客は「早い」「安い」「うまい」を求めている。提供時間の遅れは客のニーズに合っていなかった。確かに、焼き牛丼は「うまい」の面で他社より有利だったかもしれない。しかし、「早い」を犠牲にしたことのマイナスが大きかった。

●オペレーションで差が出た

大手3社に戦いを挑んだことで、東京チカラめしは非効率なオペレーションを露呈させることになる。店舗の急拡大に人材育成が追い付かず、客からは「提供が遅い」「店舗が不衛生だ」という声があがった。

大手牛丼チェーンは店舗のオペレーションが高度に発達している。大手3社には日本語に不慣れな外国人店員でも店舗を効率的に運営できるノウハウがある。前述した通り、牛丼業界は資本力がある企業によって寡占化が進んでいる業界だ。資本力を背景に高度な店舗ノウハウを蓄積しており、力の差は歴然だった。

こうして東京チカラめしは徐々に追い詰められていった。三光マーケティングフーズの有価証券報告書(14年6月期)では、苦戦する背景として「米国産牛肉等の主要食材の高騰、コンビニエンスストア等、業種を越えた企業間競争の激化、雇用環境の変化に伴う人員不足、さらには平成26年4月の消費税増税による収益力の低下」を挙げている。そして、同社は居酒屋業態に経営資源を集中させるため、東京チカラめしの業態を大幅に縮小させることを決定した。

●どんな戦略を打ち出すべきだったか

東京チカラめしは、どのような戦略を打ち出すべきだったのだろうか。

例えば、特定のエリアでニッチな商品で勝負する道もあったはずだ。大きくない商圏で独自の商品やサービスを提供することで堅実な経営を行う飲食チェーンは少なくない。

都内の中央線沿いを中心に展開する飲食チェーンには、ボリュームたっぷりの料理を提供する「キッチン男の晩ごはん」や、もつ焼きを提供する「四文屋」がある。「焼き牛丼」というユニークな商品を武器にコツコツと店舗を増やす戦略もあった。

ニッチなチェーンならば、店舗運営を大手牛丼チェーンとシビアに比較されることはない。多少店内が乱雑でも、「味わい」として顧客に評価される。

現在、東京チカラめしは「ごはんおかわり自由!」を強く打ち出し、ボリュームのある定食や丼のメニューを強化している。しっかり食べたい客に向けた戦略が軌道に乗れば、再成長できるだろう。

なお、東京チカラめしを運営する三光マーケティングフーズに編集部より取材を申し込んだが、回答期限までに連絡はなかった。


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みんなのコメント

 

です
ペッパー→いきなりも復活してるので先はわからない。
名無しさん
遅い、不味い、汚いを売りにしてたんでしょ
名無しさん
あの時、ご飯がマズかったから、サイト調べたら、中国産の米がブレンドされてるの見て、やめた記憶があります。 結構、これが決め手で、行かなくなった人も多かったのではと…
名無しさん
伝説のすた丼はチカラめしより高くて同じ焼き丼だけど繁盛してる。コスパの味と最低限のサービスさえクリア出来てなかったんじゃね?
名無しさん
大阪日本橋店に久しぶりに行ったら全員従業員が中国人だった、そして客も中国人なんだこれ?
やふみつる
吉野家は地方の店に比べて東京や大阪の店舗は衛生面が雑な感じがした
名無しさん
質が悪い材料に人材じゃダメになるわ。
名無しさん
単に不味い
名無しさん
経営理念は結構だが
店舗を増やしても
人を育てられないからだ。
間抜けな高校生のバイトで頭数合わせる
会社も多々ある。
大概その会社はダメになる。
人材の大事さを経営サイドはわかっていない。
チカラめし行ったが旨い不味い以前に
汚ならしい店でひどかった。
名無しさん
提供時間の早さなんかじゃなく、単純に事業規模拡大早すぎたのが原因。マーケティング、人材育成、地盤固め等出来てない状態で出店すりゃ簡単に衰退するわ。経営陣に相当な資力と能力があれば違うかもしんないけど
名無しさん
味は良かった
名無しさん
なに言ってるの、この記事書いたヤツ?
マズイ・汚い・不誠実の3点セットだからだよ!!
名無しさん
チカラめしは中国人店員ばかりでたとえ美味しくて行こうと思わない。
名無しさん
一度もこちらでは展開してなかったのだが、ここでの書き込み見ると、不衛生で不味いのであれば店舗展開などではなく、単純で当たり前のことが出来なかった結果とわかる。方針や理念の前にお客様を大切にしない企業は廃れるのは当然の結果だと。


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名無しさん
職場の近くにあったので一回食べに行った事があったが、二度と食べに来ることは無いほどの味だった。
名無しさん
大概何食ってもうまいと思うのにここのは焦げてて油まみれでまずくてもう行かねえ!って思った。
名無しさん
まあ、いろいろまずかった(味もオペレーションも)のだろうけど、新たな業態にチャレンジしたことには拍手を送りたい。こういう企業が無いと、マーケットも活性化しないからね。
名無しさん
みんな色々書いてるが大体一言で片付く
マズイ
名無しさん
仕事の合間の昼飯には無理ですね。
商品提供までの時間
チカラめし10~20分
すき家、吉野家等1~2分
これに尽きます
名無しさん
チカラめし、まずいし、油まみれだし、店舗汚いし、接客悪いし、安くないし…行く要素が見当たらない。
名無しさん
米が良くなかった!
名無しさん
覚えてるだろうか??もなにも…全然知らなかった(笑)
松屋の牛丼が一番好き。
名無しさん
「東京チカラ」めしなのに
関西にも進出したり、お金が全て
「東京のチカラ」として吸い取られるようで
反感
名無しさん
何が「経営コンサルティングが解説する」だよ。だったら、お前が経営してみろよ。
名無しさん
戦う相手が強すぎた←自分のとこが弱すぎるのは間違いでしょ。
名無しさん
米が臭いとか不味いとか不評だったからな。
名無しさん
なぜ急ぐ?
ゆっくり成長させれば良いものを。
いきなり~も同じ運命かも。
o
タレで食わしてた店。
名無しさん
そのうち行こうと思っていたら店がなくなっていた
fsl
接客がよくなかったのと味がいまいちだったので2回目はありませんでした。
その店は、ほどなく無くなりました。
hhhhhh
だいたいが居抜きの店舗で看板と軽い改装のみで、飲食店としてはなんとなく不衛生に見えた。一度も入ったことない。
名無しさん
単なる当たりハズレの問題かもしれないけど不味いと思った事は無いな。
それ以上に接客の悪さがかなり気になるレベルだった。大手3社でも腹立つ接客の店員いるにはいるけど、チカラめしは群を抜いて酷かった。
名無しさん
不味いからだろ
名無しさん
メディアがマズイ物をお金をもらって公共の電波を使って垂れ流し
さも人気があるように装い、売り上げを伸ばした典型的例です。
名無しさん
橋本店も直ぐに潰れたぞ。
名無しさん
オープン当初は料理が出るのが遅いなんてもんじゃなかった。
あと販売機がゴチョゴチョして解りづらく、それを店員に聞いたりするからまた向こうの作業が遅くなるという…とにかくキチンとしてなかったな。
名無しさん
お米が不味いからな。一度行って、二度と行かなくなった。
名無しさん
申し訳ないが今の吉野家は昔に比べて3倍遅い
名無しさん
サラダ食べ終わったら小皿の底に食券の紙ごみがへばりついてた。
食器も碌に洗えてない。不衛生で2度と行かない。

 


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